君の幸せが一番大事。

※名前変換無し
※ひたすら夢主語り







風影様になって、我愛羅は里の人気者になった。

我愛羅が里の皆に認められた。その事自体は勿論とても嬉しい。でも、ずっと我愛羅の傍にいた私としては、我愛羅が私から離れていってるようで寂しい。すごく寂しい。
だって、今までの我愛羅は私だけが生き甲斐だと言っても過言ではないほど私に依存していた。何処へ行くにも何をするにも二人一緒、私がいれば他の何もかもが要らないといったふうに。だのに、今では私なんか居なくても一人でほいほい出掛けちゃうし、お忙しい風影様の仕事もあって完全に私は蚊帳の外。そりゃあ、私はただのヒラ上忍だし、任務で居ないことも多々あるから仕方無いのは解ってるんだけど。
しかもなんか急に女子にモテるようになっちゃってさ、後輩のくのいちにも、先輩のくのいちにも、そこら辺の売り子の女子にも、挙げ句どっかよそから来た馬の骨にすら、異様にモテている。揃いも揃ってたっかい金切り声で、きゃー我愛羅様ぁ、だって。色目使って黄色い声あげて馬鹿みたい。女の子に囲まれて無表情で狼狽えてる我愛羅も馬鹿みたい。あ、無表情なのに狼狽えてるって解るのは、ずっと我愛羅だけを見てた私だから解るのね。周りに群がってる烏合の衆にはきっと、我愛羅が困ってるようには見えてないのね。寧ろ無表情すぎて、きゃーいつ見てもクールだわーってくらいなもん。なんか調子いいよね。女ってほんとわかんない。里の奴等だってわかんない。今までずっと我愛羅のこと毛嫌いしてバケモノ扱いしてたくせに、途端に手のひら返してあからさまにベタベタしちゃってさあ。我愛羅がクールで可愛くてかっこいいことなんて、私は十五年も前から知ってるっての。子供の頃は今よりも更に最強に可愛かったってこともね。ショタ我愛羅は天使のように愛くるしかった。寧ろ天使そのものだった。おどおどして泣き虫でそのくせ超無愛想だったけど、たまに見せるはにかんだ笑顔は私が鼻血出して気絶するほどの凶器だった。いったい何度出血多量で病院に搬送されたことか。死因:我愛羅の笑顔、とかカルテに書かれる日も近いと毎回思ってた。そしてその度に我愛羅は泣きながら私の目が覚めるのを待っていた。天使だ。可愛すぎる。
そんな幼い日の我愛羅を知ってるのは、多分私だけ。ついでにそんな私の変態染みた面を知ってるのも多分我愛羅だけ。だって私は生まれたときから我愛羅の隣に居て、物心ついたときには既に我愛羅が好きで、いつだって我愛羅を見てたから。泣き虫で嫌われ者の可愛い可愛い我愛羅には、私しかいないのだと思っていたから。
そんな泣き虫我愛羅を焚き付けて誰よりも無慈悲で残忍で強い忍になるよう画策したのは私だ。今は亡き四代目様の意味わかんないどろどろした親子愛じゃなくて、この私。子供とはいえ私も一応名家の忍なもんで、発狂しながら石投げてくるような愚民共や四代目様の仕向けたうちの暗部程度ならば、全員返り討ちにして我愛羅を守れる自信があった。けれど万が一、億が一にでも、私の知らないところで我愛羅に何かあったら、私はぶちギレてその我愛羅に何かした輩を里ごと吹っ飛ばしてしまう自信もあるのだ。
だから私は、夜叉丸事件をダシにして我愛羅に殺られる前に殺れと教えた。私の我愛羅が傷付くくらいなら、我愛羅を虐めるやつなんかどうなってもいいやって。今思えば多分これ超間違っちゃってたけど。しかも我愛羅の絶対防御の砂のこと思い出したのもそのだいぶ後になってからだけど。だって、我愛羅に降りかかる火の粉はだいたい私が大雨洪水で消火してたから、そもそも砂の防壁をろくに見たことなかったんだもん。だから私がいないと我愛羅が傷付けられちゃうと思ってたんだもん。だから、幼い私は幼い我愛羅にそう刷り込むしか思い付かなかったのだ。と、まあそんな感じに私のせいで、あと夜叉丸のせいで、我愛羅は途中の道を大いに踏み外した修羅になってしまったんだけれども。しかし後悔はしていない。私はね。
なのに、中忍試験に行って帰ってきたと思ったら、我愛羅は私の知らない顔をしていた。えっとなんだっけあの人、なんとか丸…蛇丸?みたいな名前の変な蛇の人に木の葉崩しとやらに巻き込まれて、木の葉の少年にこてんぱんにやられちゃって、あとなんか言われたらしい。そのなんか言われたのが、我愛羅の中に革命を起こしたんだと思うのね。私の我愛羅に何をしたんだそいつ。我愛羅の心を動かすのは私だけでいいのに。私の言葉だけに無表情を綻ばす我愛羅が可愛かったのに。解せぬ。
ともかく、それ以降の我愛羅は少しずつだけどいろんなものが柔らかくなって、少しずつ周りに歩み寄ることを覚えた。びっくりだった。まさか我愛羅がこんな風に誰かと接する日が来るなんて、思ってもみなかった。我愛羅は一生私だけを支えに二人で孤独に生きていくのだと思っていた。なのに、なのにどうして私よりずっと短い付き合いのくせにどうやって我愛羅の心に、ってああ、それはもう気にしないことにしたんだった。人柱力同士だからこそ解り得るそれがあるという事なんだろう。くそ羨ましい。代われ。九尾よこせ。
なんて会ったこともない木の葉の少年に私が何を言ったところで、テマ姉とカン兄には生暖かく微笑まれるし、我愛羅に至っては昔みたいな可愛らしいはにかみ笑顔で少年の事を語り出すからもう私はどうすればいいのか解らなくなって、最終的にはそんな嬉しそうな我愛羅を愛でることに専念してしまうんだ。


まあ結局私は何が言いたいかっていうと、そんな私が嫉妬の業火燃やしちゃうような怒濤の変化があっても、今の我愛羅がとっても幸せそうだから、まあいいかなってこと。








君の幸せが一番大事。

(でもやっぱり我愛羅は私のものだから、最後には私に帰ってきてくれなくちゃ、ね。)